患者情報のオンライン共有は、なぜ失敗するのか?
本学部公共政策学科の平井里奈・共同研究員および伊藤敦教授が、「地域医療情報連携ネットワーク政策における費用便益モデルの構築と試算」と題する共著論文を発表しました。
ポイントは、次の5点です。
- 2000 年代以降、病院や診療所などの医療機関の間で患者情報をオンライン共有するための「地域医療情報連携ネットワーク」が、全国で 400 件以上構築されてきました。
- しかし、その利用率は低迷しており、事業終了するケースも数多く生じてきましたが、原因の定量的な分析は行われていませんでした。
- そこで、構築に掛かる費用だけでなく、利用者がネットワークから得られるメリットや運営に要する労力を定量化したうえで収支を計算する 「費用便益分析」に、この政策分野で初めて取り組みました。
- その結果、構築・運用に要する多大なコストが掛かる一方で、そこから得られるメリットは限定的である点が示され、 患者情報のオンライン共有が失敗する理由を客観的に明らかとすることができました。
- 今後、医療分野に情報技術を活用していくうえで、費用の低廉化と導入メリットを拡大していくための施策が重要となるものと考えられます。
本論文は、『会計検査研究』に掲載され、オンライン公開されています。詳しくは、下記をご参照下さい。
- 掲載誌: 会計検査研究
- タイトル:地域医療情報連携ネットワーク政策における費用便益モデルの構築と試算
- 著者: 平井里奈、伊藤敦、大塚良治、丹野忠晋、櫻井秀彦、古田精一、岸本桂子、奥村 貴史
- URL: https://www.jbaudit.go.jp/koryu/study/mag/pdf/j71d03.pdf
- DOI: https://doi.org/10.51016/kaikeikensa.2502
- 原稿公開日:2025 年 9 月 30 日 (オンライン公開)
なお、本研究は、科学技術振興機構(JST)社会技術研究開発センター(RISTEX)研究開発プログラム「科学技術イノベーション政策のための科学」において実施した研究「医療情報化推進に向けた課題解明と2020 年代における政策基軸の形成」(令和 2 年~6 年)の成果です。